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2018-11-28

「嵐(あらし)」の意味

特に、雨を伴う、はげしい風。暴風雨。

*当世書生気質〔1885〜1886〕〈坪内逍遙〉一〇
「マアいいさ、所が其晩は 風雨(あらし) でネ」

1. 荒く吹く風。古くは、静かに吹く風に対し、荒い風、はげしく吹く風をいい、特に、山嵐や山おろしのことが多い。のち、暴風、烈風、もしくは颶風(ぐふう)などを含んで、広く強風の意に用いる。なお、和歌では「有らじ」と掛け詞にして用いることがある。

*古今和歌集〔905〜914〕秋下・二四九
「吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山嵐を あらしといふらむ〈文屋康秀〉」

2. 特に、雨を伴う、はげしい風。暴風雨。

(美しい日本語の辞典)



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あらし【嵐】

〔激しい風〕
a stormy wind;
a storm wind;

〔暴風雨〕
a storm;
a tempest;

《文》
the fury of the elements.

が起こった。
a storm 「arose [blew up].

・その判決に対して抗議のが起こった。
A storm of protest erupted over the verdict.

がやってきたぞ。
The storm's here!

が迫ってきた。
A storm 「bore down [closed in] on us.

・きのう一日が吹き荒れた。
A storm 「blew [raged] all day yesterday.

がおさまった。
The storm calmed down.
The storm has 「abated [died down].
The storm 「is [has blown] over.

がやむまでじっと耐える。
(sit tight and) ride out a storm

が過ぎるのを待つ。
wait for a storm to pass

(新和英大辞典)



「嵐雨(あらしあめ)」の意味

はげしい風とともに降る雨。暴風雨。

*川のほとり〔1925〕〈古泉千樫〉朝
あらしあめ 晴れてすがしき この朝や 青栗の香のあまき 匂ひす」

・古泉 千樫:
こいずみ ちかし

(美しい日本語の辞典)

2018-06-15

「抗う(あらがう)」の意味

あらが・う あらがふ【争・諍】

〘自ワ五(ハ四)〙

1. 相手の言うことを否定して自分の考えを言い張る。言い争う。

*書紀(720)敏達一四年六月(前田本訓)
「馬子宿禰諍(アラカヒ)て従はず」

*後撰(951-953頃)恋二・七八一
「ちはやぶる 神ひきかけて 誓ひてし こともゆゆしく あらがふなゆめ〈藤原滋幹〉」

・藤原 滋幹:
ふじわら の しげもと


2. 賭け事で張り合う。賭で確かにこうなると主張する。

*枕(10C終)八七
「一日などぞいふべかりけると、下には思へど、〈略〉いひそめてんことはとて、かたうあらがひつ」

*平家(13C前)一一
「かけ鳥なんどあらがうて、三に二つは必ず射おとす物で候」


3. 力ずくで張り合う。争う。抵抗する。

*浄瑠璃・妹背山婦女庭訓(1771)一
「その一巻ここへ出せば、苦痛せずに一思ひ、あらがふとなぶり殺し」

・妹背山 婦女 庭訓:
いもせやま おんな ていきん

*風立ちぬ(1936-38)〈堀辰雄〉冬
抗(アラガ)ひがたい運命の前にしづかに頭を項低(うなだ)れたまま」

(精選版 日本国語大辞典)



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あらが・う【争う・諍う・抗う】アラガフ

〘自五〙

相手の言うことを否定する。抵抗する。あらそう。

源氏物語(夕霧)
「ことにあらが・はず

(広辞苑)



あらが・う【抗う(争う・諍う)】アラガフ

〘自五〙

外から加わる強い力に従わずに、それをはねのけようとする。抵抗する。抗する。

「権力[運命]にあらがう

あらが・い難い証拠をつきつける」

(明鏡国語辞典)



あらがう【抗う】

resist; defy; oppose; protest; struggle.

・激しく抗う
resist violently

・必死に抗う
protest [struggle] desperately

・彼は権勢に抗う態度を取りつづけた。
He kept up his (stance of) opposition to the authorities. / He maintained his attitude of resistance to authority.

・彼女は次々と襲う過酷な運命に抗いながら生きている。
She is living a life of constant opposition to the assaults of cruel misfortune. / Hers is a life of constant struggle against the repeated onslaughts of cruel fate.

(新和英大辞典)



あらがう【抗う】

・権力に抗う
resist authority

・運命に抗う
fight [rebel] against one's destiny

(ジーニアス和英辞典)

2018-06-05

「洗い出す」の意味

あらい-だ・す あらひ・・【洗出】

〘他サ五(四)〙

1. 洗って木の板目などを出す。

*夢十夜(1908)〈夏目漱石〉九
「鼠色に洗(アラ)ひ出(ダ)された賽銭箱の上に、大きな鈴の紐がぶら下がって」


2. よく洗って、よごれを取り去る。

*人情本・春色恋白波(1839-41)一
「雑巾を洗ひ出し拭て居る」


3. 形や事情などをあきらかにする。

*天国の記録(1930)〈下村千秋〉三
「警察へ行ったらそいつを洗ひ出されるのが恐いんでせう」

(精選版 日本国語大辞典)



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あらい-だ・す【洗い出す】アラヒ‥

〘他五〙

1. おおっているものを洗い落として中の形をあらわす。

「木目を洗い出・す


2. 丹念に調べて、隠されていた物事や事情を明らかにする。

「問題点を洗い出・す

(広辞苑)



あらいだす【洗い出す】

1. 〔水洗いして表面が現れるようにする〕
reveal sth by washing (the surface)

〘建築〙〔コンクリートやモルタルの骨材を〕
expose aggregate by washing

・発掘された土器の文様をていねいに洗い出した。
I carefully washd the clay vessel that had been dug up, to reveal the pattern. / Careful washing revealed the 「pattern [figure] on the earthenware vessel that had been excavated.

・砂をかぶった道路の白線が激しい夕立で洗い出された。
The white lines (on the road), which had been covered with sand, were exposed when a late afternoon shower washed the sand away. / A shower washed the covering of sand from the white lined (on the road).


2. 〔調べて明らかにする〕
investigate 《a crime》 and bring to light 《the motive》; discover by investigation

・警察は発見された死体の身元を洗い出した。
A police investigation revealed the identity of the body that had been discovered.

・何が原因だったのか問題点を洗い出さなければならない。
We must root out the problems that caused it. / It is necessary to sift through the problems that led to this incident.

(新和英大辞典)



あらいだす【洗い出す】

・警察は容疑者を洗い出した
The police identified the suspect.

・問題点を洗い出す
bring the problem to light

(ジーニアス和英辞典)



あらいだす【洗い出す】

・いくつかの新しい事実を洗い出す
dig up several new facts

・我々は彼の過去を洗い出した
We dredged up his past.

(ウィズダム和英辞典)



洗い出す

・問題点を洗い出す
sort out [pinpoint] problems

・減損対象とする固定資産を洗い出す
identify candidate fixed assets for impairment write-downs

(経済ビジネス英語表現辞典)

2018-05-31

「あらあらかしこ」の意味

あらあら-かしこ

〘連語〙(粗略で意を尽くさず恐れ入るの意)

女性の手紙文または女性あての手紙文の末尾に書き添える語。あらあらかしく。

*内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遥〉六
「まづは用事のみあらあらかしこ

・内地 雑居 未来之夢:
ないち ざっきょ みらいのゆめ

(精選版 日本国語大辞典)



心を伝える手紙・はがきの書き方文例事典





あらあら-かしこ

女性の手紙の末尾に用いる語。意をつくさず恐れ入るの意。

(広辞苑) 



あらあら-かしこ

〘名〙〔感動詞的に〕女性が手紙の終わりに書くあいさつのことばで、粗略で恐れ入りますの意。

▶「かしこ」より丁寧な言い方。

(明鏡国語辞典)



あらあらかしこ【粗粗かしこ】

〔「行き届かない書き方で恐縮です」の意〕

手紙で女性が用いる結語「かしこ」の更に丁寧な表現。

(新明解国語辞典)



あらあらかしこ

〔女性の手紙の末尾に用いる語〕

  • Yours in haste.
  • Please forgive this 「scribble [scrawl, short letter].
  • Forgive me for this short letter.
  • Sorry for such a 「short [hurried] letter.

(新和英大辞典)

2018-05-30

「東風(あゆ)」の意味

あゆ【東風】

〘名〙 東の風。あゆのかぜ。とうふう。こち。

*万葉(8C後)一八・四〇九三
「英遠(あを)の浦に 寄する白波 いや増しに 立ち重(し)き寄せ来(く) 安由(あゆ)をいたみかも」

(精選版 日本国語大辞典)



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あゆ【東風】

(アイとも)東のかぜ。あゆのかぜ。

万葉集(18)
「寄する白波いや増しに立ちしき寄せ来(く)あゆをいたみかも」

(広辞苑)



あゆ【東風】

(名)東の風。「あゆの風」とも。

[万葉]19・4213
東風をいたみ なごの浦みに 寄する波 いや千重(ちへ)しきに 恋ひ渡るかも」

[訳]東の風がひどく吹くので、なごの浦辺に寄せる波のように、いよいよ幾重にもしきりに恋し続けることよ。(第三句までは、「いや千重しきに」を導きだす序詞)

(旺文社全訳古語辞典)

2018-05-19

「文目も分かず」の意味

[慣]あやめも分(わ)かず

1. 物事をはっきり識別できない。物の区別がわからない。〔匠材集(1597)〕

*読本・椿説弓張月(1807-11)前
「燈燭(ともしび)滅(きえ)て善悪(アヤメ)もわかず

・匠材集:
しょうざいしゅう

・読本:
よみほん

・椿説 弓張月:
ちんせつ ゆみはりづき


2. 判断力の不足などで、物事を筋道立てて考えられない。分別がつかない。

*源氏(1001-14頃)蛍
「あらはれて いとど浅くも 見ゆるかな あやめもわかず なかれけるねの」

(精選版 日本国語大辞典) 



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[慣]文目もわかぬ

[解]物の区別もつかない。また、物事の分別もつかない。

文目もわかぬ闇」

(広辞苑)



文目も分かぬ

〔物の形がわからないほど暗い〕
pitch dark;
as black as pitch;
so dark (that) you can't see your hand in front of your face

〔思慮分別がない〕
uncomprehending;
benighted

文目も知らぬ恋
(a) blind love

(新和英大辞典)

2018-05-18

「文目(あやめ)」の意味

あや-め【文目】

〘名〙

1. 綾織物の織り目。また、模様。あや。

*朝光集 (995頃)
「おぼつかな 錦もみえぬ 闇の夜に 何のあやめを おるにかあるらん」

・朝光集:
あさてるしゅう


2. 視覚などによって識別すべき模様や物のかたち。物の区別。あいろ。「あやめも分かぬ」などと、下に打消の意の語を伴う場合が多い。

*宇津保 (970-999頃) 楼上下
「あがほとけ、なほ見せ給へ。〈略〉まだあやめも見えざりしをだに」


3. 物事の論理的な筋道。また、物事を順序立てて考えること。条理。分別。「あやめも知らず」などと下に打消の意の語を伴うことが多い。

*源氏 (1001-14頃) 箒木
「なにのあやめも思ひしづめられぬに」

・箒木:
ははきぎ


4. ハモのすり身を、豆腐と一緒に田楽にして、皿に盛り、葛餡(くずあん)をかけた料理。

[補注]
和歌では「菖蒲(あやめ)」にかけて用いることが多い。

(精選版 日本国語大辞典)



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あや-め【文目】

1. 模様。色合い。

2. 物のすじ。条理。区別。

源氏物語(夕顔)
「もののあやめ見給へ分くべき人も侍らぬわたりなれど」。

古今和歌集(恋)
あやめも知らぬ恋もするかな」

(広辞苑)



あやめ【文目】

〔模様〕
a pattern; a design; a figure

〔物事のすじ道〕
a stripe; stripes

〔区別・けじめ〕
a distinction


文目も分かぬ

〔物の形がわからないほど暗い〕
pitch dark; as black as pitch; so dark (that) you can't see your hand in front of your face

〔思慮分別がない〕
uncomprehending; benighted

文目も知らぬ恋
(a) blind love

(新和英大辞典)

2018-05-17

「奇に(あやに)」の意味

あや-に【奇-】

〘副〙(感動詞「あや」に助詞「に」がついてできた語。言葉に表せないほど、また、理解できないほどの感動をいう)なんとも不思議に。わけもわからず。むやみに。めもあや。

*古事記(712)中・歌謡
「この御酒(みき)の 御酒の 阿夜邇(アヤニ) 転楽(うただの)し」

*鈴屋集(1798-1803)九
「見まつれば あやにゆゆしく かなしきろかも」

・鈴屋集:
すずのやしゅう

[語誌]
「あや」は、「あやし」「あやしぶ」などの「あや」と同源で、感動詞「あや」に基づく。上代にも既に程度の副詞としての用法が見えるが、時代が下るにつれて、「目もあやに」の形など固定化されて修辞的な用法が主となる。

(精選版 日本国語大辞典)



ふしぎの図鑑





あや-に【奇に】

〘副〙

何とも不思議なまでに。むやみに。

古事記(下)
あやにかしこし高光る日の御子」

(広辞苑)



あや-に【奇に】

〘副〙

〔古〕たとえようもなく何とも不思議に。わけもなく。

あやに尊し」

▶ 「あや」は「怪しい」の「あや」と同じ。

(明鏡国語辞典)



あやに

1. 【《奇に】〔雅〕〔「あや」は「ああ」の意〕 表現の限度を超えて。

あやに畏(カシコ)き 〔=ああ恐れ多い〕」


2. 【《文に】 目を奪われるほど美しい様子。

「目もあやに

(新明解国語辞典)



あや-に(副)

〔「あや」は、驚嘆を表す感動詞〕

なんとも言いようがなく。驚くほど。むやみに。

「はつはつに(=ホンノチョット) あひ見し子らし あやにかなしも」〈万・14・3537〉

(旺文社古語辞典)



あや-に

(副)言いようもなく。わけもなく。むしょうに。 

[万葉]14・3537
「柵(くへ)越しに 麦食(は)む子馬の はつはつに 相見(あひみ)し子らし あやに愛(かな)しも」

訳: 柵越しに麦を食う子馬が、かろうじてほんのわずか食うように、ほんのちょっと会ったあの子がむしょうにかわいいことだ。(民謡として歌われていたとみられるものの一つ)

(旺文社全訳古語辞典)

2018-05-16

「綾取る(あやどる)」の意味

あや-ど・る【文取・綾取】

〘他ラ五(四)〙

1. (古くは「あやとる」)巧みに操作する。あやつる。

*中華若木詩抄(1520頃)中
「弄すると云は、機をあや取るやうな心ぞ」

・中華若木詩抄:
ちゅうかじゃくぼくししょう


2. たすきなどを十文字に結ぶ。

*浄瑠璃・伽羅先代萩(1785)道行
操どるごとき細道を、分つつ来つつ、行がてに」

・伽羅先代萩:
めいぼくせんだいはぎ


3. (模様、文章などを)美しく飾る。美しくいろどる。〔日葡辞書(1603-04)〕

(精選版 日本国語大辞典)



刺繍でいろどる女の子の服





あや-ど・る【綾取る】

〘他五〙

1. 巧みに扱う。あやつる。

2. (文章などを)飾る。日葡辞書「ブンシャウヲアヤドル

3. (たすきなどを)十字に結ぶ。

(広辞苑)



あやどる【綾取る】

〔文章を飾る〕
decorate; ornament; make ornate.

・華麗にあやどられた文章
an elegantly 「decorated [embellished] sentence [passage, text]

(新和英大辞典)

2018-05-15

「彩雲(あやぐも・さいうん)」の意味

さい-うん【彩雲・綵雲】

〘名〙

1. 美しくいろどられた雲。朝日や夕日などに映えて美しい雲。

*源平盛衰記(14C前)一七
「綝袖(りんしう)と花の袖翻りて、彩雲(サイウン)の翠の嶺を廻るが如し」〔李白-早発白帝城詩〕


2. 高層の雲の縁辺部が、其の縁に平行にいろどられてみえる現象。色は緑とピンク色が主。光冠(コロナ)と同じく、雲をつくる微小水滴によって太陽光が回折されたときににられる現象。

(精選版 日本国語大辞典)



今の空から天気を予想できる本





さい-うん【彩雲】

縁(ふち)などが美しく色づいた雲。日光が雲の水滴で回折するために生じるもので、主に高積雲に見られる。

(広辞苑)



さいうん【彩雲】

「美しく照りはえる雲」の意の漢語的表現。〔特に、朝日・夕日に照らされた雲を指す〕

(新明解国語辞典)



彩雲[サイウン](iridescent cloud)

光環と同じく、太陽や月の光が微小な水滴や氷晶による回析現象で、淡い赤や緑で縁どられるか、あるいは部分的に輝いて見える雲。巻雲、巻積雲や高積雲などで見られる。昔は吉兆として、慶雲、景雲、紫雲(しうん)、瑞雲(ずいうん)などの名前で呼ばれた。

(ブリタニカ国際大百科事典)



さいうん【彩雲】

glowing [iridescent] clouds.

・彩雲におおわれる
be 「mantled [canopied] with golden clouds.

(新和英大辞典)



彩雲

iridescent (or glowing) clouds

(自然科学系和英大辞典)



彩雲: さいうん・あやぐも

2018-05-14

「肖る(あやかる)」の意味

あやか・る【肖】

〘自ラ五(四)〙 

1. 揺れ動いて変化する。動揺する。変化する。

*拾遺 (1057-07頃か) 雑恋・一二五一
「風はやみ 峰のくず葉の ともすれば あやかりやすき 人の心か 〈よみ人しらず〉」

*海人刈藻物語 (1271頃) 二
「女御殿はとくまゐらせ給へとあれど、人々は『あやかりやすき御さまを、今少し見奉り給へ』と」

・海人刈藻:
あまのかるも

2. 感化されて、同様な状態になる。似る。多くは、しあわせな人に似て、自分もしあわせになるなど良い状態についていう。

*八幡愚童訓 (甲) (1308-18頃) 上
「御椀に鞆を書て御弓を引給しに肖(アヤカ)て、皇子の御椀に鞆の形あり」

・八幡愚童訓:
はちまんぐどうくん

・鞆:
とも

*虎明本狂言・財宝 (室町末-近世初)
「お年にも、御くゎほうにもあやかるように、三人の者共に、名を付て下されひ」

・虎明本:
とらあきらぼん

*文明開化 (1873-74) 〈加藤祐一〉 二
「我がなした事でもないに、たたりを受る事などがある、夫は俗にあやかるといふ様な事で」


3. (疫病が)流行する。

*多聞院日記-弘治二年 (1556) 正月一三日
「目赤はいかにもふさきて養生すへし。人にうつる物也。あやかるもの也」

・多聞院日記:
たもんいんにっき

・弘治:
こうじ

(精選版 日本国語大辞典)



あやか・る

(自五)

理想的状態にある人と何らかのかかわりを持って、自分もそうなりたいと思う。

(新明解国語辞典)



影響力の正体 - 説得のカラクリを心理学があばく





あやかる【肖る】

have similar good luck; share sb's good luck

・父にあやかって息子の名を太郎とつけた。
I named my son Taro 「for [after] my father.

・私もキミにあやかりたいね。
I wish I were as lucky as you.
If only I had your luck!
How I envy your luck!

・先生にあやかって字がうまくなりたい。
I want to be as good at 「calligraphy [penmanship] as my teacher (is).

・サッカーブームにあやかろうとこの町の菓子屋がサッカーボールの形のケーキを売り出した。
Intending to benefit from the soccer boom, confectioneries in this town started selling caked made in the shape of soccer balls.

・町はオリンピックのあやかり商品であふれていた。
The town was flooded with Olympic-related goods.

(新和英大辞典)



あやかる

私もあなたの幸運にあやかりたい
I wish some of your good luck would 「come to [rub off on] me.
I wish I had some of your good luck.

・祖父にあやかって息子を太郎と名付けた
We named our son Taro after my grandfather.

(ジーニアス和英辞典)

2018-05-13

「天の海(あめのうみ)」の意味

[慣]あめの海(うみ)

大空の青く広大なのを海にたとえていうことば。あまのはら。天海(てんかい)。あまのうみ。

*万葉(8C後)七・一〇六八
天海(あめのうみ)に 雲の波立ち 月の船 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ」

(精選版 日本国語大辞典)



Discover Japan TRAVEL 2016年3月号「海の京都」





あめの-うみ【天の海】

広い大空を海にたとえていう語。

万葉集(7)
天海に雲の波立ち」

(広辞苑)



あめ-の-うみ【天の海】(名)

大空を海にたとえた語。

天海に 雲の波立ち 月の船 星の林に 漕(こ)ぎ隠る見ゆ」〈万・7・1068〉

(旺文社古語辞典)

2018-05-12

「雨台風(あめたいふう)」の意味

あめ-たいふう【雨台風】

〘名〙台風のうち、特に雨の量や影響が大きいもの。

*故郷忘じがたく候(1968)〈司馬遼太郎〉
「途中、雨台風のあとで道が悪く」

(精選版 日本国語大辞典)



台風についてわかっていることいないこと





あめ-たいふう【雨台風】

風はあまり強くないが、雨が強く降った台風を後からいう言葉。

⇔ 風台風

(広辞苑)



あめたいふう【雨台風】

a typhoon accompanied by a lot of rain; a typhoon that 「brings [causes] heavy rain (rather than strong wind); a typhoon with heavy rain.

(新和英大辞典)



雨台風[アメタイフウ]

風による被害は比較的小さく、雨による被害が大きい台風の俗称。厳密な定義はない。一般に、梅雨期や秋季の台風は風よりも雨による被害が大きい。1947年9月14〜15日に関東・東北地方に大雨を降らせ、利根川と荒川の堤防の決壊により東京都、埼玉県に未曽有の大水害を起こしたカスリン台風や、1958年9月26〜28日に東海・関東地方で大雨をもたらして狩野川を氾濫させ、伊豆地方で1000人をこえる死者を出したほか、神奈川県、東京都でも浸水、崖崩れ等の大きな被害をもたらした狩野川台風は、雨台風の代表的なものである。

(ブリタニカ国際大百科事典)

2018-05-11

「雨風(あまかぜ)」の意味

あま-かぜ【雨風】

〘名〙雨が降りだしそうな、湿気を含んだ風。また、雨を伴って吹く風。

*源氏千鳥抄(1388か)
「藤の裏葉 〈略〉 あま風 雨気の風也」 

・源氏千鳥抄:
げんじちどりしょう

(精選版 日本国語大辞典)



雨ニモマケズ風ニモマケズ - 宮澤賢治詩集百選





あま-かぜ【雨風】

雨気(あまけ)を含んだ風。また、雨につれて吹く風。

枕草子(188)
「三月ばかりの夕暮に、ゆるく吹きたるあまかぜ

(広辞苑)



あまかぜ【雨風】

a rainy wind; [突然の] a squall.

(新和英大辞典)



あま-かぜ 【雨風】 (名)

雨気(あまけ)をふくんだ風。

「心あわただしき雨風に、みなちりぢりにきほひ帰り給ひぬ」〈源・藤裏葉〉

・藤裏葉:
ふじのうらば

(旺文社古語辞典)



あま-かぜ【雨風】

(名) 雨を降らせそうな湿気を含んだ風。

[枕]197
「三月ばかりの夕暮れにゆるく吹きたる雨風

[訳]陰暦三月ごろの夕暮れ時にゆるやかに吹いている雨を降らせそうな風(も趣がある)。

(旺文社全訳古語辞典)

2018-05-09

「天(あめ)」の意味

あめ【天】

〘名〙

1. 天。空。あま。

*古事記 (712) 下・歌謡
「雲雀は 阿米(アメ)にかける」

・雲雀:
ひばり

*万葉 (8C後) 一七・三九〇六
「御園生の 百木(ももき)の梅の 散る花の 安米(アメ)に飛び上り 雪と降りけむ」

・御園生:
みそのふ


2. 天つ神のいる処。高天原。また、神のいると信じられた天上界。

*古事記 (712) 上・歌謡
阿米(アメ)なるや おとたなばたの うながせる たまのみすまる」

・高天原:
たかあまはら

*源氏 (1001-14頃) 乙女
「あめにますとよをかびめの宮人も我が志すしめを忘るな」

・宮人:
きゅうじん / くにん / みやびと


3. 日本神話に登場する、高天原に属する神やものの美称をつくる。「あめ・・・」「あめの・・・」の形で用いる。

あめ金機(かなばた)」「あめの香具山(かぐやま)」など。


4. 宮殿の屋根のあたり。

*万葉 (8C後) 一九・四二七四
天(あめ)にはも 五百(いほ)つ綱延(は)ふ 万代に 国知らさむと 五百つ綱延ふ」

[補注] 複合語をつくる場合「あま」の形になることが多い。

・万代:
ばんだい / まんだい / よろづよ

(精選版 日本国語大辞典)



高天原は関東にあった 日本神話と考古学を再考する





あめ【天】

1. (「くに」に対する)天空。

古事記(下)
「雲雀は あめに翔(かけ)る」


2. (「つち」に対する)大空。

万葉集(5)
あめへ行かば 汝(な)がまにまに 地(つち)ならば 大君います」


3. 天つ神、造物主のすむ所。高天原(たかまのはら)。天上界。

(広辞苑)

2018-05-08

「雨夜の品定め」の意味

[慣]あまよの品定(しなさだ)め

1. 「源氏物語-箒木」で、夏の雨の夜に、物忌みのため宿直(とのい)していた光源氏のもとへ、頭中将、左馬頭、藤式部丞が来て、女性の品評をし、理想像を論じ、さらに各自の体験談を語ったのをいう。

*源氏 (1001-14頃) 夕顔
「ありしあま夜のしなさだめの後いぶかしく思ほしなるしなじなあるに」

・箒木:
ははきぎ

・頭中将:
とうのちゅうじょう

・左馬頭:
さまのかみ

・藤式部丞:
とうしきぶのじょう


2. (転じて)人の品評をすること。

*其面影 (1906) 〈二葉亭四迷〉 二二
「母子(おやこ)鼻を突合せて雨夜(アマヨ)の品定めをやった後で」

・其面影:
そのおもかげ

(精選版 日本国語大辞典)



まんがで読破 - 源氏物語





あまよ-の-しなさだめ【雨夜の品定め】

源氏物語の箒木(ははきぎ)の巻の中で、夏の雨夜に、光源氏の所で頭中将(とうのちゅうじょう)たちがさまざまな女性の品評をする段。雨夜の物語。

(広辞苑)



しなさだめ【品定め】

assessment, evaluation, appraisal

・メロンの品定め
the evalvation [assessment] of melons

・人の品定めをする
appraise [evaluate] a person;
〘略式〙 size a person up

・骨董品の品定めをする
evaluate [estimate] an antique

(ジーニアス和英辞典)

2018-05-06

「雨宿り(あまやどり)」の意味

あま-やどり【雨宿】

〘名〙

1. 雨にあった時、軒下や木陰などに休んで晴れるのを待つこと。あまやみ。あまよけ。あまやど。

*催馬楽(7C後-8C)婦が門
安万也と利(アマヤトリ) 笠やどり 舎(やど)りてまからむ 郭公(しでたをさ)」

・催馬楽:
さいばら

*雑俳・柳多留-初(1765)
「本ぶりに成て 出て行 雨やどり

・雑俳:
ざっぱい

・柳多留:
やなぎだる

2. サトザクラの園芸品種。花が垂れ下り、白色で径約四センチメートル。花弁は三〜四列になる。

(精選版 日本国語大辞典)



半村良 - 雨やどり





あま-やどり【雨宿り】

雨のはれるまで雨のかからない所でしばらく待つこと。「軒下で雨宿りする」

(広辞苑)



あまやどり【雨宿り】

〜する
take 「shelter [refuge, cover] from the rain; shelter (oneself) from (the) rain; get out of the rain

雨宿りに軒下へ駆けこむ
run and get under the eaves 《of a house》 「for shelter from [to get out of] the rain

雨宿りに格好の大木
a large tree that offers perfect shelter from the rain

(新和英大辞典)



あまやどり【雨宿り】

・大きな木の下で雨宿りする
take shelter from the rain under a large tree

雨宿りの場所を見つける
find shelter from the rain

(ジーニアス和英辞典)



あまやどり【雨宿り】

雨宿りする
[動] take shelter (from the rain); (雨がやむのを待つ)〘米話〙 wait out the rain

(ウィズダム和英辞典)



あまやどり【雨宿り】

雨宿りのため喫茶店に入った
We went into a cafe to 「take shelter from [or get out of] the rain.

(オーレックス和英辞典)

2018-05-05

「天の御空(あまのみそら)」の意味

[慣]あまの御空(みそら)

天空。あまつみそら。

*万葉(8C後)五・八九四
「天地(あめつち)の 大御神たち 大和の 大国霊(おほくにみたま) ひさかたの 阿麻能見虚(アマノみそら)ゆ 天翔(あまかけ)り 見渡し給ひ」

(精選版 日本国語大辞典)



天空の地図 人類は頭上の世界をどう描いてきたのか





あま-の-みそら【天の御空】

→あまつみそら。

「ひさかたの(=枕詞) 天の御空ゆ 天(あま)がけり」

(旺文社古語辞典)



あま-つ-みそら【天つ御空】(名)

〔「み」は美称〕

空。天空。=天つ空・天の御空。

「ひさかたの(=枕詞) 天つ御空に 照る月の 失(う)せなむ日こそ わが恋止(や)まめ」〈万・12・3004〉

(旺文社古語辞典)

2018-05-04

「天原(あまのはら)」の意味

あま-の-はら【天原】

〘名〙

1. (「はら」はひろびろとした平らな所をさす)広く大きな空。

*万葉 (8C後) 一五・三六六二
安麻能波良(アマノハラ) ふりさけ見れば 夜そふけにける よしゑやし 一人寝(ぬ)る夜は 明(あ)けば明けぬとも」

*古今 (905-914) 羇旅・四〇六
あまの原 ふりさけみれば かすがなる みかさの山に いでし月かも 〈阿倍仲麿〉」

・羇旅:
きりょ


2. 天つ神が統治する天上界。高天原。

*書紀 (720) 神代上 (水戸本訓)
「弟(なせのみこと)来ませる所以(ゆえ)は是れ善き意に非(あら)じ。必ず当に我が天原(アマノはら)を奪(うば)はむとならむ」

[枕] (富士山が天に高くそびえ立っているところから) 「富士」にかかる。また、「空」の枕詞としても用いる。

*万葉 (8C後) 一四・三三五五
安麻乃波良(アマノハラ) 富士の柴山 木の暗(くれ)の 時移(ゆつ)りなば 逢はずかもあらむ」

(精選版 日本国語大辞典)



落語で読む古事記 はじまりは高天原





あまの-はら【天の原】

1. おおぞら。

万葉集(2)
天の原 振り放(さ)け見れば」


2. 日本神話の天上界。高天原(たかまのはら)。

古事記(上)
「吾が隠(こも)りますによりて天の原おのづから闇(くら)く」

(広辞苑)



あまのはら【天の原】

the sky; the heavens.

(新和英大辞典)



あまのはらふりさけみれば〈名歌名句〉

《和歌》 百人一首
天(あま)の原(はら) ふりさけ見れば 春日(かすが)なる 三笠(みかさ)の山に 出(い)でし月かも】

作者: 阿倍仲麻呂

出典: 古今集・九・羇旅・四〇六

訳: 大空を遠くふり仰いでみると、月がのぼっているが、それは、かつて故国の春日にある三笠山にのぼった、あの月と同じ月であるなあ。

(古語林 古典文学辞典/名歌名句辞典)

2018-05-01

「天邪鬼(あまのじゃく)」の意味

あま-の-じゃく【天邪鬼】

〘名〙

1. 民話などに悪役として登場する鬼。天探女(あまのさぐめ)に由来するといわれるが、瓜子姫(うりこひめ)の話に見えるものなど変形は多い。あまのざこ。あまのじゃき。あまのじゃこ。あまんじゃく。〔俗語考(1841)〕


2. (形動) 何事でも人の意にさからった行動ばかりをすること。また、そのようなさまやそのような人。ひねくれ者。つむじまがり。

*評判記・赤烏帽子 (1663) 中村蔵人
「人のなせそといふことを、別而好まるるは、天のじゃくの氏子にはなきかとおほさる」


3. 仏像で、仁王や四天王の足元に踏みつけられている小悪鬼。また、毘沙門(びしゃもん)の鎧の腹についている鬼面の名。

*壒嚢鈔 (1445-46) 一〇
「毘沙門の鎧の前に鬼面あり。其名如何 常には是を河伯面と云。〈略〉或書に云。河伯面、是を海若(アマノジャク)と云」

・壒嚢鈔:
あいのうしょう

(精選版 日本国語大辞典)



はれときどきあまのじゃく





あま-の-じゃく【天邪久・天邪鬼】

1. 昔話に出てくる悪者。人に逆らい、人の邪魔をする。天探女(あめのさぐめ)の系統を引くといわれるが、変形が多い。あまんじゃぐめ。〈壒嚢鈔(10)〉

夏目漱石、夢十夜
「鶏(とり)の鳴く真似をしたものは天探女(あまのじゃく)である」

2. わざと人の言に逆らって、片意地を通す者。

3. 仁王や四天王の像がふまえている小鬼。

(広辞苑)



あまのじゃく 【天邪鬼】

a devil (whose image is shown being trampled upon by one of the two guradian deities place in a Buddhist temple gate)

〔性質〕
perverseness

〔人〕
a perverse person; a cross-grained person

・私の中のあまのじゃくが頭をもたげた 。
A perverseness within me raised its head.

・あなたはあまのじゃくだ。
You are perverse!
You're just being difficult!

(新和英大辞典)



あまのじゃく 【天の邪鬼】

(ひねくれ者)
perverse [twisted] person

・彼はあまのじゃくだ
He is perverse [twisted].

・彼女の性格にはあまのじゃくなところがある
There is something warped [perverse] in her personality.

(ジーニアス和英辞典)



あまのじゃく

(つむじ曲がり)
a contrary [a perverse] person.

あまのじゃくな女でこちらが何を言ってもとにかく反対するのが楽しみなんだ。
She takes a perverse pleasure in upsetting everything I say.

(ウィズダム和英辞典)



あまのじゃく 【天邪鬼】

・彼はあまのじゃくで、ああ言えばこう言いたがる。
He is a contrary person, perversely inclined to disagree with others.

(オーレックス和英辞典)

2018-04-23

「遍く(あまねく)」の意味

あまねく【遍・普】

〘副〙(形容詞「あまねし」の連用形の副詞化)すべてにわたって広く。一般に。

*色葉字類抄(1177-81)
「洽聞 アマネク」

・色葉字類抄:
いろはじるいしょう

・洽聞:
こうぶん

(精選版 日本国語大辞典)



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あまねく【遍く・普く】

〘副〙(形容詞「あまねし」の連用形から)すべてにわたって、広く。

「全国にあまねく知られる」

(広辞苑)



あまねく【普く・遍く(周く)】

〘副〙広く全体に及ぶさま。広くすみずみまで。

「文名は普く天下に輝き渡る」

「陽光は遍く大地を覆う」

▶ 文語形容詞「あまねし」の連用形から。

[表記]
「普」は広く全部に行き渡る意(普及)。「遍」はまんべんなく広がる意(遍在・遍照)。「周」は欠け目なく行き届く意(周知・周到)。一般には「普」でまかなうことができる。

(明鏡国語辞典)



あまねく【遍く・普く】

〔広く〕
widely; extensively; far and wide; at large;

〔一般に〕
generally; universally;

〔すみずみまで〕
everywhere; all around; all over (the country); throughout (the land).

あまねく探す。
make a through [wide] search; comb.

・彼は自動車産業を育て上げたことであまねく世界に知られている。
He is known throughout the world for having promoted [due to the fact that he has promoted] the growth of the automobile industry.

・この建築方法はあまねく全国に普及している。
This construction method has spread widely thoughout the whole country.

(新和英大辞典)



あまねく【遍く】

(広範囲に)
widely;

(幅広く)
broadly

あまねく知られた事実
a widely [broadly] known fact

・彼の名はあまねく知れわたっている
His name has become widely known in the world.

(ジーニアス和英辞典)

2018-04-22

「天つ御空(あまつみそら)」の意味

[慣]あまつ御空(みそら)

大空。天空。あまつそら。

*万葉(8C後)一〇・ニ三ニニ
「はなはだも 降らぬ雪ゆゑ こちたくも 天三空(あまつみそら)は 曇らひにつつ」

(精選版 日本国語大辞典) 



今の空から天気を予想できる本





あま-つ-みそら【天つ御空】(名)

〔「み」は美称〕 空。天空。=天つ空・天の御空。

「ひさかたの(=枕詞) 天つみ空に 照る月の 失(う)せなむ日こそ わが恋止(や)まめ」〈万・12・3004〉

(旺文社古語辞典)

2018-04-21

「天つ空(あまつそら)」の意味

[慣]あまつ空(そら)

1. 天。空。大空。あまつみそら。

*古今(905-914)恋五・七五一
「久方の あまつそらにも すまなくに 人はよそにぞ 思ふべらなる 〈在原元方〉」


2. (空のように遠い、というところから)時間的・空間的にはるか遠い所。遠くかけ離れた世界。また、まったく縁がないこと。

*古今(905-914)恋一・四八四
「ゆふぐれは 雲のはたてに 物ぞ思ふ あまつそらなる 人をこふとて 〈よみ人しらず〉」


3. (雲の上というところから)宮中。禁中。朝廷。天皇。

*古今(905-914)雑体・一〇〇三
「人まろこそは うれしけれ 身はしもながら ことの葉を あまつそらまで きこえあげ すゑのよまでの あととなし 〈壬生忠岑〉」


4. (空に浮いているように)心がふわふわして落ち着かないさま。うわのそら。有頂天。

*万葉集 (8C後) 十二・二八八七
「立ちて居て たどきも知らず 吾が心 天津空なり 土は踏めども」

(精選版 日本国語大辞典)



宮中 季節のお料理





あまつ-そら【天つ空】

① 天空。大空。

古今和歌集(恋)
「久方の あまつそらにも 住まなくに」


② 宮中。禁中。

古今和歌集(雑体)
「言の葉を あまつそらまで 聞えあげ」


③ はるかに遠く、かけ離れた所。

古今和歌集(恋)
あまつそら なる人を恋ふとて」


④ 心の落ちつかぬこと。うわのそら。

万葉集(12)
「我(あ)がこころ あまつそらなり 土は踏めども」

(広辞苑)

2018-04-15

「あまつさえ」の意味

あまっ-さえ【剰え】

〘副〙(「あまりさえ」の変化した語。古くは「に」を伴うこともある。現代では「あまつさえ」)

1. 物事や状況がそれだけでおさまらないで、さらによけいに加わる意を表わす。そればかりか余分に。その上。おまけに。あまりさえ。あまさえ。

*太平記(14C後)四
「越王を楼より出し奉るのみにあらず、剰(アマツサエ)越の国を返し与へて」

*仮名草子・伊曽保物語(1639頃)下
「つゐに飽き足る事なふて、あまっさへに宝をおとして其身をもほろぼすもの也」


2. (事態の異常なことなどに直面して)驚いたことに。あろうことか。あまさえ。

*土井本周易抄(1477)一
剰(アマッ)さへ負る耳(のみ)ならず、尸(し)をのせてかへらうぞ」

*幼学読本(1887)〈西邨貞〉ニ
「しかるに彼れ等は少しも我れにしたしまずして、かへって我れを嫌ひ、あまつさへ、ややもすれば我れをころさんとす」

(精選版 日本国語大辞典)



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あまつさえ【剰え】アマツサヘ

〘副〙
(アマリサエの音便アマッサエの転)

前文をうけて、それだけでも並大抵でないのに、その上にさらに(悪いことが)加わる意を表す。そればかりか。その上に。あまさえ。

狂言、柿山伏
「この貴い山伏を最前から鳥類禽類に喩へをる。あまつさえ鳶ぢやと云うた」

日葡辞書
アマッサエ

「日は暮れて、あまつさえ雪までも降って来た」

▷ 近年はアマツサエが多いが、転ずる前の形のアマッサエも使う。

(広辞苑)



あまつ-さえ【剰え】-サヘ

〘副〙
〔古風な言い方で〕そのうえに。おまけに。多く、悪い事柄を累加する気持ちで使う。

「雨はますます激しく、あまつさえ風まで吹き出した」

▶ 「あまりさえ → あまっさえ → あまつさえ」と転じた。「あまっさえ」も使うが、「あまつさえ」が一般的。

(明鏡国語辞典)



あまつさえ アマツサヘ【剰(え)】

(副)
〔「余りさへ」の変化。古くは「あまっさへ」〕

許容の限界を超えていることの上に、さらに好ましくないことが付け加わったと判断する様子。

「暴言を吐き、あまつさえ殴りかかってくる始末だ」

(新明解国語辞典)



あまつさえ【剰え】

besides; moreover; in addition.

・彼は家々から金品を盗みだし、あまつさえ数人の市民の命まで奪った。
In addition to stealing money and things from many houses, he also murdered several residents.

(新和英大辞典)

2018-04-14

「天つ風(あまつかぜ)」の意味

[慣]あまつ風(かぜ)

空を吹く風。

*古今(905-914)雑上・八七二
あまつかぜ 雲のかよひぢ 吹きとぢよ をとめのすがた しばしとどめん 〈遍昭〉」

・遍昭:
へんじょう

(精選版 日本国語大辞典)



薩摩酒造 天つ風





あまつ-かぜ【天つ風】

天を吹く風。

古今和歌集(雑)
あまつかぜ 雲の通ひ路 ふきとぢよ」

(広辞苑)



あまつかぜ・・・

[和歌](百人一首)
天つ風 雲の通ひ路 吹き閉ぢよ をとめの姿 しばしとどめむ】〈古今・17・雑上・872・良岑宗貞〉

・良岑 宗貞:
よしみねの むねさだ

大空を吹く風よ、天女が帰ろうとする雲間の通い路を、雲を吹き寄せて閉じて通れなくしてくれ。この舞が終わってもあの美しい天女(=「五節の舞姫」ノコト)の姿を、いましばらくこの地上にとどめて眺めることができると思うから。(小倉百人一首では俗名ではなく、僧正遍昭(そうじようへんじよう)として収録)

(旺文社古語辞典)

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