あまっ-さえ【剰え】
〘副〙(「あまりさえ」の変化した語。古くは「に」を伴うこともある。現代では「あまつさえ」)
1. 物事や状況がそれだけでおさまらないで、さらによけいに加わる意を表わす。そればかりか余分に。その上。おまけに。あまりさえ。あまさえ。
*太平記(14C後)四
「越王を楼より出し奉るのみにあらず、剰(アマツサエ)越の国を返し与へて」
*仮名草子・伊曽保物語(1639頃)下
「つゐに飽き足る事なふて、あまっさへに宝をおとして其身をもほろぼすもの也」
2. (事態の異常なことなどに直面して)驚いたことに。あろうことか。あまさえ。
*土井本周易抄(1477)一
「剰(アマッ)さへ負る耳(のみ)ならず、尸(し)をのせてかへらうぞ」
*幼学読本(1887)〈西邨貞〉ニ
「しかるに彼れ等は少しも我れにしたしまずして、かへって我れを嫌ひ、あまつさへ、ややもすれば我れをころさんとす」
(精選版 日本国語大辞典)
▷ 大河ドラマ 太平記 完全版 第壱集
あまつさえ【剰え】アマツサヘ
〘副〙
(アマリサエの音便アマッサエの転)
前文をうけて、それだけでも並大抵でないのに、その上にさらに(悪いことが)加わる意を表す。そればかりか。その上に。あまさえ。
狂言、柿山伏
「この貴い山伏を最前から鳥類禽類に喩へをる。あまつさえ鳶ぢやと云うた」
日葡辞書
「アマッサエ」
「日は暮れて、あまつさえ雪までも降って来た」
▷ 近年はアマツサエが多いが、転ずる前の形のアマッサエも使う。
(広辞苑)
あまつ-さえ【剰え】-サヘ
〘副〙
〔古風な言い方で〕そのうえに。おまけに。多く、悪い事柄を累加する気持ちで使う。
「雨はますます激しく、あまつさえ風まで吹き出した」
▶ 「あまりさえ → あまっさえ → あまつさえ」と転じた。「あまっさえ」も使うが、「あまつさえ」が一般的。
(明鏡国語辞典)
あまつさえ アマツサヘ【剰(え)】
(副)
〔「余りさへ」の変化。古くは「あまっさへ」〕
許容の限界を超えていることの上に、さらに好ましくないことが付け加わったと判断する様子。
「暴言を吐き、あまつさえ殴りかかってくる始末だ」
(新明解国語辞典)
あまつさえ【剰え】
besides; moreover; in addition.
・彼は家々から金品を盗みだし、あまつさえ数人の市民の命まで奪った。
In addition to stealing money and things from many houses, he also murdered several residents.
(新和英大辞典)
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