〘副〙(感動詞「あや」に助詞「に」がついてできた語。言葉に表せないほど、また、理解できないほどの感動をいう)なんとも不思議に。わけもわからず。むやみに。めもあや。
*古事記(712)中・歌謡
「この御酒(みき)の 御酒の 阿夜邇(アヤニ) 転楽(うただの)し」
*鈴屋集(1798-1803)九
「見まつれば あやにゆゆしく かなしきろかも」
・鈴屋集:
すずのやしゅう
[語誌]
「あや」は、「あやし」「あやしぶ」などの「あや」と同源で、感動詞「あや」に基づく。上代にも既に程度の副詞としての用法が見えるが、時代が下るにつれて、「目もあやに」の形など固定化されて修辞的な用法が主となる。
(精選版 日本国語大辞典)
▷ ふしぎの図鑑
あや-に【奇に】
〘副〙
何とも不思議なまでに。むやみに。
古事記(下)
「あやにかしこし高光る日の御子」
(広辞苑)
あや-に【奇に】
〘副〙
〔古〕たとえようもなく何とも不思議に。わけもなく。
「あやに尊し」
▶ 「あや」は「怪しい」の「あや」と同じ。
(明鏡国語辞典)
あやに
1. 【《奇に】〔雅〕〔「あや」は「ああ」の意〕 表現の限度を超えて。
「あやに畏(カシコ)き 〔=ああ恐れ多い〕」
2. 【《文に】 目を奪われるほど美しい様子。
「目もあやに」
(新明解国語辞典)
あや-に(副)
〔「あや」は、驚嘆を表す感動詞〕
なんとも言いようがなく。驚くほど。むやみに。
「はつはつに(=ホンノチョット) あひ見し子らし あやにかなしも」〈万・14・3537〉
(旺文社古語辞典)
あや-に
(副)言いようもなく。わけもなく。むしょうに。
[万葉]14・3537
「柵(くへ)越しに 麦食(は)む子馬の はつはつに 相見(あひみ)し子らし あやに愛(かな)しも」
訳: 柵越しに麦を食う子馬が、かろうじてほんのわずか食うように、ほんのちょっと会ったあの子がむしょうにかわいいことだ。(民謡として歌われていたとみられるものの一つ)
(旺文社全訳古語辞典)